ドラマ「ハヤブサ消防団」でカルトポイント解説
TVドラマ「ハヤブサ消防団」は、カルト宗教「崇教真光」の元信者の私tenが太鼓判を押す神作品。
今までに見たカルト宗教ドラマの中でも最高峰です。
真光(元)信者の人も是非ご覧あれ。
今までのカルトドラマとの違い
何が一番素晴らしいかというと、カルト宗教信者たちを「特別な人たち」ではなく市井の「普通の人々」として徹頭徹尾描ききったこと。
ここに制作者の熱い魂を感じました。
カルトの教材としてもなかなか優れているので、いくつか解説をしていきましょう。
ちなみにドラマ「ハヤブサ消防団」の宗教監修は高橋圭也さん*1。
専門は、陰陽道や中国・日本伝兵法学、軍師陰陽道・軍配兵法学など。学歴・東洋大学中国哲学科中退、國學院大學文学部神道学科卒業。明階神職資格取得。
映画「死国」監修。(公式サイトプロフィールより抜粋)
ときめき!カルトポイント解説
立木彩の人物像
立木彩は元々アビゲイルと近い思想の持ち主でした。
ハヤブサに惹かれた理由の一つに「スーパーナチュラルな場所」「パワースポット」などといっており、超自然現象にさほど抵抗がありません。
また、当番などの役割が面倒だという太郎に「ハヤブサのみんなを家族のように思っている。家族のために何かするのは面倒だと思わない」
と少し不機嫌になりました。
つまり彼女は元々思想がスピ系で、共同体に奉仕するのが好きな「信者向きの人間」ということです。
そんな性格なので会社からも公私ともに搾取されていました。
アビゲイル騎士団のPR映像。
子供たちが輪になったり、光の輪を取り入れたり、教団のテーマである「円環」をモチーフにしユートピア思想など汲んだ作品を作成して絶賛されました。
東京アーツムービー時代から「ループ 昨日の明日」というドラマの脚本を書いており、教団の「円環の思想」と共感するところがあったのでしょう。
カルトといっても何でもいいわけではありません。
団体によって様々なテーマがあり、元々自分の持っている思想と近ければリアリティが感じられます。
本人が漠然とした不安を抱えているなら「世界の滅亡」や「選民思想」と相性が良いでしょう。
自然派ならオーガニックや手作り、医療否定などがグッと来るでしょう。
趣味の気晴らし程度なら大して害はないのですが、医療否定は命に関わります。
三馬太郎との恋愛関係
交際相手がカルト信者だった
交際時や結婚後に、相手が信者だと判明してネットで相談する人が多いです。
何故か高確率で女性側が信者なんですよね。「カルト宗教あるある」の詰め合わせみたいなドラマ。
相手が信者だとわかったら、私からのアドバイスは「別れるか、一緒に地獄に落ちていく覚悟を決めてくれ」としか。
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事務所内の雰囲気が変
滝川明日香に案内され、ガラス張りの事務所のようなところに入ると、全員がほぼ同時に振り向いて体のまで手を組みます。
腕や首にライラックのスカーフを巻いて、微笑んでいるんだけど、どことなく個性の薄さを感じます。
この「微妙な間」「ちょっとした違和感」を描写してるのは、なかなかカルトポイントが高いです。
この特にセリフもないような一般信者たちもよく描かれています。
いきなりラスボス杉森
杉森は当時から幹部のため、広い個室を与えられています。
杉森は緊張してるか彩に聞き、素直に緊張を認めたので、明るいカフェに誘導して話を聞くことにしました。
いきなり間合いを詰めすぎない。
他の信者に対しても「まだ入会を決めてないから、絡まないように」と釘を刺して安心させるのもカルトポイントです。
すでに全国に支部があるような大きな団体なので、がっつかない余裕があります。
杉森は弁護士らしく給与や作品の権利についての相談にのり、「依頼料は成功報酬でよい。給与を回収できたらその一部を杉森個人ではなく教団に寄付という形にしてほしい」
とあまり金についても興味がないように見えます。
信者との触れあいで彩が少し笑顔になったところを見計らって、教本をすっと渡すのはやはり抜け目がないですね。
意外と作り込まれているアビゲイルの教義
無限の円環構造を中心にした教義が語られます。
会社もやめて社会との接点もない状態の彩には教義がよく染み渡ります。
「円の中でのみ安寧な世界を造る」
外の世界は危険だ。彩から搾取した会社のように。
同じ信者のみが安全なサークル内にいる。つまり信者以外は安全ではなくても良い。だから放火しても構わない。
一度入信した者はずっと仲間。
裏を返せば脱会を認めない。
「終わりなき孤独からの救済を得る」
仲間との絆は心地よいものです。しかし絆とは排他性そのもの。
円の中に閉じこもるのは時に危険なこともあります。
彩の服の色にも注目
就職して脚本を書いていたときは元気なレッドオレンジですが、脚本を奪われた時には黒っぽい茶。教団を訪れてからは暗い紫です。
ちなみにアビゲイル騎士団のシンボルは、円環の外側がオレンジで、内側が明るい紫色です。落ちていく夕日から朝焼けの紫なのでしょう。
服装の色で、彩の染まり具合を表しています。
そして杉森と東京アーツムービーを訪れたときには、全身黒服になっていました。
このときに彼女は一度魂を失って、信者として新たな生を得ました。
ハヤブサに来てからは薄いライムグリーンを着ています。ちなみに太郎はだいたい青。
一番大事なものを捨てた彩
杉森は法律上支払い義務のありそうな無断欠勤していた間の給与と賞与未払いのみを要求。
一番大事なはずの脚本の権利については、何故かあっさりと諦めています。
彩が魂を失った瞬間
「立木、どういうことだ」と聞かれ、彩が「あの」と答えようとした瞬間に杉森は「(略)……救済に参りました」と発言をかぶせてきます。
助け船を出したように見えて、実際には彩の意思を、言葉を潰したのです。
この後の彩は自分自身を失っていく課程の顔をしています。
話し合いを終えた浅野ヤスノリは「お前も信者なの? おいみんな、拍手拍手。立木がカルトに入ったってよ。ほらほらおめでとうだろ、な」とバカにします。
おめでとうは昔流行った自己啓発系カルトネタですね。
杉森は冷静に「カルトとはカリスマ的な指導者を熱狂的に信奉する集団を指すと言われています。ときにその組織体系が構成員の自立的な行動や思考が損なわれることもあります」
と、彩にやさしい目線を送って発言を促します。彩は杉森の思うがまま。
「じゃあ、ここがカルトじゃないですか。私は、こんな教祖に身を捧げるつもりはありません」
献身こそが彩の生きがい。このへんの機微は女性らしいですね。
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PRビデオを作成したあとは杉森と同じ白い服になり、洗脳が完了した事が分かります。
「そのとき何かが一つに繋がったような、自分の人生がなにか分かったようなような気がしたんです」
これは頭がパァーンですね。
第5話の話ばかりで前に進みませんが、6話以降もカルト講座を続ける予定です。
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