神社検定壱級合格者が解説する、ゴーストオブツシマの神社建築
参拝すると護符がもらえる神社ですが、なかなか再現度が高くて感心しました。
前回の記事ではゲーム全体をざっくり紹介。
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厳原の鳥居は神明系
厳原地域はスタンダードな
鳥居は
この二本の横棒のうち上が
この笠木が水平なのが神明系の鳥居で、上に反っている方が
明神系はまた改めてご紹介しましょう。
笠木と貫は円柱。貫は柱を貫通しません。
二本の柱には転び(傾斜)がありません。
笠木と貫をつなぐ
金室神社の巫女さんがいるあたりに、皮をはいだだけの素朴な丸太の鳥居があります*1。
扁額と額束はないタイプですね。
このように、一つの神社に複数のタイプの鳥居が混在するのは現実の神社でもよくあることです。
神社の探し方
ゲーム内では鳥居をたどって神社を探します。
ただ一本道とも限らないので、「これって神社に近づいているの? それとも逆に離れて行ってる?」と不安になったことはありませんか?
鳥居の扁額に地名が書いてあるのが表ですので、鳥居を通り抜けて進みましょう。
扁額と蒙古襲来
さて、蒙古襲来で有名な扁額は「敵国降伏」。
箱崎宮の楼門と裏鳥居にあるそうです。
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ゴーストオブツシマの神社の扁額には地名が入っていますが、一般的には神社名を書くことが多いんじゃないでしょうか。
「じゃあゴーストオブツシマの扁額は間違いなの?」というと、決してそうではありません。
合祀や明治の改称などで神社名が変わることだってあります。
何故扁額には神社名ではなく地名なのか、ちょっと考察してみました。
古代において、地元の神様というのは、地名や神社名に神と加えて「○○神」とお呼びしておりました。地元の人たちの神様や氏族の神様だったのです*2。
10世紀以降になると日本神話に登場するような、人格的な神様の名前が文献に現れたり、全国各地に勧請されていきます*3。
この流れを知ったとき、「地元の酒屋が大手コンビニチェーンになったのと似てるなあ」と思いました。
ということで、扁額を見て思うことは、原始的な神社をイメージしたのかもしれないということでした。
対馬は古代的な神道の雰囲気が残っているそうなので*4、もしかしたらそれが反映されているのかもしれません。
社殿の形式は流造
社殿の形式は神社検定参級の範囲ですが、神明造か大社造かぐらいしか出題されません*5。
正面から屋根(平)が見えるのが神明造。屋根の三角(妻)が見えるのが大社造です*6。
平側に入り口があるので平入。三角の方に入り口がついていると妻入です。
厳原の社殿は「
流造は神明造から発展した形式で、左手に回ると屋根が「へ」の字になっており、なだらかに上に反っています。
屋根の長さは均等ではなく、手前側に延ばして
横から見て屋根の下に三カ所ほど雲のような形の装飾がされています。これが
取り付ける位置によって名前が変わり、真ん中が
緑色で縁取りされているのは、たぶん銅板でしょう。
神主さんから、懸魚は「防火を願って魚のデザインのものをつけた」と聞いたような気がします。
建築上の目的としては「屋根の妻部に置いて、破風に取り付け、棟や桁の木口をふさぎ、その腐朽を防ぐための部材*9」だそうです。
参拝ビフォアアフター
参拝が終わると米、塩、酒が
じん、お前だったのか。
下山したら鳥居をご覧ください。
参拝前は鳥居の注連縄がちぎれていますが、参拝後には立派な注連縄になっています。
もうこの描写だけで100点ですね。
「大神」の大神降ろしとはまた違った味わいがあります。
神社を修理し、祭祀をもっぱらにすべきこと
蒙古襲来は1274年ですが、1232年(貞永元年)に御成敗式目が制定されました。
「守護や地頭の任務と権限を定め」たもので「武家の最初の整った法典」です*10。
その第一条が神社に対する御家人の態度です。
「社殿を整え、お祭りをしっかり行うことで神威は増し、人もその神徳を受けることで幸せになれる*11」「神祭りに怠慢があってはならない*12」。
境井仁が参拝すると、いつの間にか献饌としめ縄の修繕が行われていますが、あれは地頭の務めです。
やはり神ゲー(ガチ)では?
稲荷の祠
よく見ると分かるのですが、厳原のお稲荷さんは神社と同じ流造になっています。
豊玉、上県もそれぞれの地域の神社と同じ造りになっているので、祠に手を合わせる*14機会があれば確認してみてください。
外国の人って赤い鳥居とお稲荷さん好きよね。
BABYMETAL - メギツネ - MEGITSUNE (OFFICIAL)
その他参考にしたサイト
nisinojinnjya.hatenablog.com
www.tamagawa.ac.jp
おことわり:御成敗式目は読みづらい部分を一部かなに改めました。
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*1:記憶が確かなら、他の神社の近辺にもありました
*2:神社のいろはP20
*3:ということは、10世紀以前の古い神社が多いのかもしれません。
*4:対馬観光協会対馬神社ガイドブック ~神話の源流への旅~」 blog.kacchell-tsushima.net
*5:壱級合格者が解説とか書いてますが、弐級と壱級を勉強しても神社建築には詳しくならないのです
*6:神道は伊勢系と出雲系で分かれているのを念頭に置くと国譲り神話からご祭神論争まで理解しやすくなります。
*7:社寺建築の工法 佐藤日出男著
*8:この模様は猪目懸魚ですが、他にも貝頭、梅鉢、などの模様があります
*9:よくわかる古建築の見方 寺院、神社、城郭P115
*10:神社のいろはP94
*11:神社のいろはP94
*12:同上
*13:むしろ北向きに揃えてるのすごくないですか。