真光やめたら幸せになりました

真光やめるほどじゃないけど、ちょっと疲れたな。そんなときは一息つきましょう。無理にやめなくてもいいんですよ。

真光の元ネタ イズノメの正体に迫る 前編

ゲーム「ハデス」からギリシア神話に興味を持ち、日本神話と似ていることを知りました。
そしてギリシア神話はインドやメソポタミアなどに源流があることや、遠く離れた国にも日本神話に似た神話があることを知りました。
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久しぶりに真光の元ネタです。

真光の元ネタ イズノメ編

真光の御神体は掛け軸なのですが、隣に大黒様のような像がありますよね。
あれがイズノメです。

大昔に真光で聞いた話なのですが、真光の神は人間に物質文明を発展させるために一時的に神の台座から降りて他の神に譲ります。
一緒にいた? イズノメはその龍体を切り刻まれ、雑煮にされて食べられてしまった。
大昔の話で記憶に自信がないので、この話をご存知の方がいらしたらコメントをいただければと思います。

まず、イズノメとはなんぞや? というとこから始めましょう。

神道のイズノメ

実は神道にもイズノメという神様はおられます。

古事記によると、イザナキが黄泉国から戻って禊祓をしたときのことです。
日向の海浜で服を脱ぎ、水で濯ぐと、穢らわしい国に行ったときの汚垢(けがれ)から、八十禍津日神(やそまがつひのかみ)大禍津日神(おおまがつひのかみ)という神が生まれました。
その(わざわい)を元に戻そうとして成った三柱の神が神直毘神(かむなおびのかみ)大直毘神(おおなおびのかみ)、最後に伊豆能売(いずのめのかみ)*1

洗い流した穢れから災いが生まれ、それを直すための神イズノメが生まれたのです。
ちなみに古事記には登場しますが、日本書紀には登場しません。

真光では伊都能売大国魂大国主之大神としています。
この大国魂大神(おおくにたまのおおかみ)オオクニヌシの別名です*2。何故イズノメとオオクニヌシをひとまとめにしたのかはよく分かりませんでした。

オオクニヌシとは

オオクニヌシスクナビコナやオオモノヌシとともに(国を平定し、農業や医療を広めて)豊かな国を造りました。

アマテラスはこの国は我が子が治めるべきだと出雲に平定の使者を送りますが、オオクニヌシに懐柔され、こびて帰りません。次の使者には弓矢を与えましたが、オオクニヌシの娘と結婚して戻りませんでした。それどころか様子を見に遣わされた雉を、授けられた弓矢で射殺しました。

入念に選んだ神を天から送り出しても、寝返らせるくらいに富を持っていたのです。

おそらく光玉が参考にしたのは、出口王仁三郎やかつて在籍した救世教のイズノメでしょう。
ぐぐったら疲れたので深入りしないことにします。

岡田茂吉によるとイズノメは龍神だそうです。
「汚れをすすぎ清める女神*3」という説を採るならば、水に関わりのある女神ではあります。

スピ系の人はやたらと龍神がいるだの視えるだのと主張するそうですが、この界隈に脈々と受け継がれているようですね。

神話の龍神たち

中国には竜の話が多くありますが、風雨を自在に操り、美女に化けて王をたぶらかしたりします*4

世界の神話には川の女神を娶り、富や不思議な力を得て王になる話が多くあります。

高句麗の神話では、解慕漱(かいぼそう)という一番偉い神様が、柳花(りゅうか)という川の神の娘を娶り、柳花が産んだ息子の明王(とうめいおう)高句麗を建国しました。
スキタイの神話では、天上の最高神パパイオスとドニエプル川の神の娘が結婚してタルギオスを産み、その息子コラクサイスが最初の王になります。

さて、日本神話では川が海に変わります。

アマテラスの孫ニニギは地上に降りてコノハナサクヤビメを娶りました。
その息子のホオリは海の神ワダツミの娘のトヨタマビメを娶り、海水や雨水を自在に操る力を得ました。二人の間に生まれたウガヤフキアエズは、トヨタマビメの妹(つまり叔母)タマヨリビメを娶ってカムヤマトイワレビコ神武天皇)が生まれました。

一番えらい天の神と、河や海の女神やその娘と結婚して統治者になるというあらすじは似ています。

聖書にもレビヤタンやラハブという名前で登場しますが、こちらは討伐されるべき化け物になってしまいました。

次回は聖書や古代オリエント神話の龍からからイズノメの正体に迫ります。
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神社検定の勉強は進んでいますか?

この時期は毎年勉強を根詰めてやっていたのですが、今年からは受験しませんので変な感じがしますね。

神社検定の記事が読まれていない

毎年、年が明けてから春先くらいまでは神社検定の記事へのアクセスが増えていました。
今年は全然読まれていません。
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もしかして今年は受験者が減っているのでしょうか?

神社検定の記事を書かなくなったことなどが影響して読まれなくなっただけなのか、神社検定の受検者数自体が減っているのかは気になるところです。

申込者数の変移を見ていきましょう。

神社検定受検申込人数の変移

第1回6,115人(2012年)
第6回3,711人(2017年)
第7回3,408人(2018年)
第8回3,466人(2019年)
第9回3,230人(2021年)

傾向としては概ね減り続けています。
第8回は即位礼の影響で微増しましたが、第9回はコロナで一年あいてしまったため受験者数が減っています。一年に一度のイベントを休むと、途切れてしまいがちです。

初級を増設して申込者数は422人と多くありましたが、申込者数を見る限り参級受験者が初級に流れたと見え、受験申込者数全体の増加には寄与しませんでした。

本来なら2年ぶりですから、受験者数が1,000~1,500人程度増えてもよかったはずです。

オンライン受験の善し悪し

受験して分かったのは、良くも悪くも緊張感がないことです。
試験会場で受けると、一問目の難問で頭が真っ白になり、時間を浪費して見直しの時間がなくなって10点くらい落とすものです。

壱級は、第8回(2019年)と第9回(2021年)では平均点や合格率がかなり上がっています。
合格率は第8回は43%。第9回は52.3%。
平均点は第8回は66.9点。第9回は70点。

弐級と壱級は合格率40%を目安に作られているようです。

私も第8回は79点でしたが、第9回は93点と高得点が穫れています。会場での受験でしたら90点は取れてなかったでしょう。
参級は100点を穫れる人もいますが、壱級では困難を極めるでしょう。100点満点は、目指すと逆に不合格になりやすくなる茨の道です。

第6~8回壱級の最高点は96~98点で100点はいませんが、第9回ではなんと100点が3人もいます。
ちなみに第8回は申込者数435人のうち、実際に受験したのが388人。第9回申込者数312人のうち受験者数は287人。
実際の受験者数が101人も減っているのに、100点が3人もいます。

弐級と参級も100点が多すぎるので、合格率調整のため第10回(令和4年)は難化が予想されます
(ちなみに、変に難化しすぎても受験者は減ります)。

一年の延期で勉強できる期間が増えたのもありましょうが、やはり緊張やストレスもなく、会場に行くまでの重いテキストを持ち歩いて行く疲れもありません。

オンライン検定試験は画面で問題が見づらいですし、問題に書き込みができないので見直しもやりづらかったですねぇ。
確か最後の問題の選択肢を選ぶと回答終了になる方式だったと思います。見直しをしつつ時間内ギリギリで最後の選択肢を選んで、その辺がやや手間でした。

合格特典に「オンライン」と書かれるのが嫌だという意見もありました。「せっかくいい匂いのする檜の絵馬なのに」といささか残念な気はしました。

合格率にかなり差が出てしまった以上、会場試験との差別化は致し方ないところです。
オンラインと書かれた絵馬は欲しくないから受験しない、という人もいました。

何故なのか?

オンライン受験の罠

「オンラインにしたら受験しやすくなるだろうから、受験申し込みが増えるだろう」というのは誤解です。むしろ逆です。
少なくとも長期的には減っていきます。急激に減るのかもしれません。

そもそも神社検定は、受験申込数が3,200~3,400人とそれなりに規模の大きい検定試験です。
それでも試験会場は46カ所と、ほぼ全国で開催されていました。

他の民間検定と比較してみましょう。

世界遺産検定は、受検者が約11,000人程度ですが、受験会場は20カ所程度。
歴史能力検定は、2015年の受験者数が9200人程度で、現在の試験会場は29カ所。
神社検定の受検申込数はこれらの1/3程度なのに会場は倍ぐらいあります。

県内に一カ所程度に試験会場があるので、逆にオンライン受験になってもたいしたメリットがありません。

気軽に受けられると言うことは、緊迫感もありません。気も緩んで勉強に身も入りません。
「まあ、受けても受けなくてもいいや」と思うようになります。

一年でたった一日のために、何冊もテキストや動画教材も買い、何度も問題集を解いてテキストを読み直し、つまらないわ分からないわと苦痛なことばかりです。
「なんでまた、今年も受験を申し込んでしまったんだろう」と何度後悔したことでしょう。

壱級の要語集なんてそもそも日本語の意味が分かりません。
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試験日を指折り数えては不安になり、枝葉末節にこだわったり、新しい教材に手を出したり。
試験の一週間前から生ものなどを避けたり、軽い運動で眠りやすくしたりなど、試験当日の体調をベストコンディションにするための努力も必要です。

第8回の壱級の試験が終わった後は、手応えのなさにショックで呆然としていたので、帰り道はあやうく怪我をしそうになったくらいです。それぐらいストレスでした。

そうやって己の弱さと闘い、打ち克った上で手に入れる合格の絵馬だからこそ、ありがたいのです。

オンライン試験でその緊張感と、合格したときの感謝の心がはたして得られるのでしょうか?

どうする、神社検定

当面は、新しい薬が開発されては新株が生まれ、またワクチンを打つことの繰り返しになるでしょう。

私には、神社界隈にはもっとお金が流れてほしいというお気持ちがあります。
こうやって神社検定の話を書いているのも、なんとか続いてほしいなと思っているからです。

神社検定は、第8回の受験者数が約2,800人で受験会場は46カ所。圧倒的に人口密度が低いです。徳島県鳥取県は参~壱級合わせても7人しか受験していません。
ほぼ県内に一カ所受験会場があるので、移動距離も少ないです。
受験ですから、見知らぬ人々と会話を楽しむようなものでもありません。

もう会場試験を再開している検定試験もあります。

試験会場での受験再開を希望

受験予定のない私が言うのもなんですが、オンラインはあくまでも一時的な対処とし、そろそろ試験会場での実施を検討していただけないでしょうか?
ほぼ全国津々浦々での試験実施には、何かの理念に基づいたものではなかったのでしょうか?

例えば神様も神社も、信仰も氏子も、その土地ごとに根付いたもののはずです。

「神社にはそれぞれに歴史があり、同じ名称のご祭神であっても、一つとして同じ神社はないのです」

*1
地元のご祭神さまを尊崇する市井の人々に、受験してほしかったのではないでしょうか?
もしかして教化の一環でもあったのではないでしょうか?

正直、もうこのままオンラインで継続しそうな雰囲気を感じます。

なぜほぼ全国での開催を選んだのか。
その目的や理念を鑑みて、会場試験の再開を検討していただけませんか。

神社検定を存続させるために。

www.youtube.com

あと索引はいつ出るのでしょうか……もう壱級祭祀編・宗教編とも合格してしまいました。
記事を書くにも便利かもしれないので、刊行したら買うと思います。
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参考・出典

神社検定 - 神道文化検定 / 知ってますか?日本のこころ
受験者の統計はこちらを参考にしました。
その他の検定の受検者数は公式サイトに掲載されていないので、資格ブログなどを参考にしました。

*1:神社のいろはP20より

イザナキの黄泉の国訪問とオルフェウスの冥府下り

ギリシア神話と日本神話のうち、最も似ている話がオルフェウスとイザナキが死後の国を訪れる物語でしょう。

イザナキの黄泉国(よみのくに)訪問(古事記

火の神を産んだ伊邪那美命(いざなみのみこと)は女陰に火傷を負って亡くなり、夫の伊邪那岐命(いざなきのみこと)は妻に一目会いたいと、黄泉の国まで追いかけて行きました。
イザナキは閉ざされた入り口ごしに、「まだ国が完成してないから還ってきてほしい」とイザナミに頼みます。
イザナミは「早く来てくださらなくて悔しい。もう黄泉の国の食事を摂ってしまいました。還りたいので黄泉神(よもつかみ)と相談します。その間は決して私を見ないでください」と念押しします。
イザナミは奥に消えていき、長い時間待たされました。

イザナキは髪に刺した櫛の太い歯を折って、火を灯して覗き見をすると、そこにはウジがたかった妻が横たわっていました。その体の各所には八雷神(やくさのいかずちがみ)もいます。
イザナキは恐ろしくなって逃げ帰ります。

しかしイザナミは「決して見てはならないと約束したのに、よくも私に恥をかかせてくれました」と黄泉の国の醜女(しこめ)を遣わして追いかけさせました。
イザナミが髪飾りの蔓草を投げるとブドウに変わり、醜女たちはそれを食べるので、その間に逃げます。食べ終わるとまた追いかけてくるので、次は櫛を投げると、タケノコに変わり、醜女はまたタケノコを抜いては食べます。
今度はイザナミは八雷神に黄泉の国の兵をそえて追いかけさせましたが、イザナキは後ろ手で剣を振りながら逃げます。
そして黄泉比良坂(よもつひらさか)で桃を投げつけて追い返します。

最後に追いかけて来るのはイザナミ本人です。
イザナキは千人がかりで動かせるような大岩を引いて塞ぎ、岩ごしに二人は絶縁の言葉を言い合います。
「いとしい夫の(みこと)よ、私はあなたの国の人草(ひとくさ)(国民)を一日に千人くびり殺そう」と宣言しました。
イザナキは「いとおしきわが妻の命よ、おまえがそのようにするなら、わたしは一日に千五百の産屋を建てよう」と応えました。

オルフェウスの冥府下り

詩の女神ムサイの一人であるカリオペを母に持つオルペウス(オルフェウス)は天才的な音楽家で、竪琴の発明者とも言われています。その演奏と歌声は猛獣の心も和らげ草木もなびくと言われるほどです。
彼は女精(ニュンペ)エウリュディケと結婚して幸せに暮らしていました。しかしエウリュディケは友人と野原に行ったときに、毒蛇に咬まれて亡くなってしまいました。

この事故で最愛の妻を失ったオルペウスは嘆き悲しみ、竪琴で彼女を偲ぶ歌を歌い続けても心は慰められませんでした。
そしてオルペウスは妻を取り戻すべく、竪琴を片手に地下の死の国へと赴きました。
死んだ者は二度と生き返らないというのが曲げられない冥府の掟です。
ところがオルペウスの哀切な歌声は、冥王ハデスとその妻ペルセボネの非情な心ですら動かしてしまい、掟を曲げてエウリュディケを連れ帰る許可がでました。
妻を連れ帰る条件はただ一つだけ。オルペウスの後をついて行く妻の姿を決して振り返らないこと。
喜び勇んで帰路に就いたものの、後ろから妻の足音が全く聞こえません。気配も感じられず、不安に耐えかねて振り返ってエウリュディケを見ると、彼女は息絶えて倒れてしまいました。
せっかく一度は失った妻を取り戻せそうだったのに、今度は永遠の別れとなってしまったのでした。

このように話の骨格はほとんど同じです。
妻を不慮の事故で失い、夫は彼女を取り戻すために地下の死後の国を訪れる。その願いを叶える条件はただ一つ、妻の姿を決して見ないこと。
夫はそれを守れず二人は別れ、夫だけが地上に戻る。

オルフェウスとイザナキの違い

違いはイザナキは妻の変わり果てた姿を見て、恐ろしくなって逃げたこと。
一方オルフェウスは、地上に戻ったのちは色々あって殺害されてしまったのですが、頭部は川から海へと流されながらもエウリュディケを慕う歌を歌い続け、レスボス島に漂着しました。なんとも一途な男です。
イザナキは黄泉の国に行くことは簡単でしたが、帰り道は怖そうな醜女や兵に追われました。「死」は行けば後戻りのできない世界なのです。
オルフェウスは生きているので、冥府へは入れないとステュクスの渡し守のカロンにも断られます。番犬ケルベロスも妨害します。
黄泉の国と違い、冥府は生きた者が入ることの困難さに重きを置きつつ、それを乗り越えるのはオルフェウスの音楽であり、芸術の重要度にも文化の差が表れています。

さて、大切な人を取り戻すために、死後の世界に赴く話は他の国にもあります。
タタールの伝説には、怪物に切り落とされた兄の頭を妹が取り戻す話があり、満州叙事詩には若者の魂を取り戻す話があるそうです。
大切な人を取り戻すことに成功していることが大きく異なっています。

では他国には妻を取り戻せなかった話はないのでしょうか?

ニュージーランドマオリ族の話

タネという神は配偶者がほしくなり、土で女の形を作って生命を吹き込み、これと交わってヒネという娘をもうけました。その娘が成長してから妻にしました。
しかしヒネは自分の夫が父親であることを知り、恥じて自死を選び地下で偉大な夜の女王となりました。
タネは妻の死を悲しんで冥界に行き、ヒネの家にたどり着いて戸を叩きますが、ヒネは入らせてくれません。
タネはヒネに、自分と地上に戻るように頼みますがヒネは断りました。
タネには一人で地上に戻り、太陽の下で子孫を養うように勧め、自分は冥界にとどまって彼らを暗黒と死の中に引き下ろすであろうと宣言します。

妻を取り戻せなかった点や二人の別れの言葉は似ていますね。
ヒネは近親婚を恥じて死を選んだので、「そもそも帰る意志がない」のが大きな違いといえます。
やはり愛し合った二人が引き裂かれないと話が盛り上がりません。

この妻を取り戻せない物語は、日本とギリシア以外では北米の原住民の伝承にもあります。

カリフォルニア地方のテルムニ・ヨクット族のお話

死んだ妻と一緒に使者の国に行き、冥府の主に妻を連れ帰る許可を願います。
「もし夫が一晩中眠らずに妻を守って過ごせば願いを聞き届ける」と約束を取り付けました。
夫は妻と床に入り、夜を過ごしますが夜明け前に深い眠りに落ちてしまいました。目を覚ますと腕の中の妻は腐った薪に変わっていました。
もう一晩チャンスをもらったもののやはり眠ってしまい、妻はまた腐った薪になりました。
夫は冥府を去るときに、「この冒険を六日の間に誰かに知られると、死んでしまう」と警告をされます。
夫は一人で生きるよりは早く妻の元に行きたいと願い、家に帰って隣人を招いてこの話を聞かせ、翌日に蛇に咬まれて死にました。

与えられた課題に失敗して、妻を取り戻せなかった点は同じですが、地上に戻った夫がすぐ死んだ点は違います。
死因が蛇なのはエウリュディケと同じです。

ギリシア神話の死後の世界観は、他にも日本と共通点があります。

三途の川と六文銭

ギリシア神話では、冥府へ行くにはステュクスという川を渡ります。そこにはカロンという渡し守がいて、渡し賃を払って船に乗せてもらいます。
死者を埋葬するときは、その口に1オロボス銅貨を含ませていたそうです。

死者の国の食べ物を食べると帰れなくなる

イザナミは黄泉の国の食事を摂ってしまったために帰れないと言いました。
これは「黄泉戸喫(よもつへぐひ)」といい、「黄泉の国のかまどで煮炊きした食べ物を食べる」という意味です。いわゆる同じ釜の飯を食うというものです。
「一緒に飲食をすること」だけではなく「同じ火を共有すること」もいけないのです。

別のギリシア神話にも似たようなルールが登場します。
冥王ハデスにさらわれた妻ペルセポネも、冥府でザクロの実を数粒食べさせられたため、一年のうち4か月を冥府で過ごさねばならなくなりました。
ここには「同じ火の共有」の概念はありません。

この死者の国の食べ物を口にして帰れなくなるというルールは日本とギリシア限定ではなく、北米・ポリネシアに多いそうです。

旅をする神話

遠く離れたギリシアの神話が日本神話にも影響を与えた、というのはなんとなく知っていたいましたが、ここまで話が似ていたり、死後の世界観などの共通点があるとは知りませんでした。
その中に真光の元ネタらしきものを一つ見つけたので、また記事にする予定です。

ギリシアの文化は遊牧民であるスキタイ人が好み、朝鮮半島ではスキタイの文化の影響がありました。

古墳時代の日本は、当時は文化が進んでいた朝鮮半島との結びつきが強く、新しい技術や文化をもった人が移住していました。
朝鮮にもスキタイにも三種の神器に似た話があり、影響があったのは確実だとされています。

ギリシア神話を読むことで、また日本の個性や特徴も分かるので、日本神話がより深く味わえるようになると思います。
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参考・出典

「日本人はどこからきたかシリーズ 神話から見た古代人の世界」吉田篤彦監修 福武書店
この記事はほとんど吉田敦彦氏の著述によります。P220よみのくに、P247~8「罪と穢の概念」P1206直会の民俗、P329「新嘗会」と「火継神事」、P333神人共食の形。

「ハデス」-ギリシア神話の冥界と神道の黄泉国-

死後の世界

あまり取り上げたことのない死後の世界が今回のお話です。

さて、一般的な古代ギリシアの神話と、このゲーム「ハデス」では死後の世界観が全く異なっています。
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古代ギリシア研究家藤村シシンさんの言葉を要約*1すると

一般的な古代ギリシア神話は現世利益主義

  • 現世利益主義とは「死んだらそこで終わり」
  • 神々との関わりやご利益は生きている間のみ受け取れる。
  • 死後は天国や地獄もなく、善人も悪人も関係なく全員がハデスの館で暗い影になる。
  • 冥界に関心がないのでほとんど描写もされない。

ザグレウスの神話では輪廻転生

  • 生は絶対ではなく、魂は永遠に続く。
  • 冥界からその魂が地上にもう一度戻ってきて、いろんな未来に向かって魂が転生していく。
  • 魂の輪廻を断ち切って最終的に神になる
  • 死んでからが本番
  • 死んだ後の世界こそが次の世界に繋がるものだから、冥界が詳細に描かれる。


ゲーム内ではこの二つの考え方がブレンドされています。

ハデスの館から出て、地上を目指す間――つまり人生で――さまざまな神と出会い、功徳を受けます。道中手に入れた功徳とお金は死亡時にすべて失い、ハデスの館に戻されますが記憶は残っています。
つまり何度も死んでは繰り返し地上への脱出を目指し続ける輪廻転生の物語です。
ハデスの館ではキャラクタとの会話できます。つまりここでしかメインストーリーが進行しないので、まさに死後が本番。
道中に得た闇の結晶などでザグレウス自身や武器を永続的に強化します。
また冥界を工事し、例えば回復できる水場などの設備を設けたりします。つまり来世に向けての大事な準備です。

さて、ここからが本題。

2つの死後観

この「一般的な古代ギリシア神話の冥界観」と「ザグレウス神話の冥界観」は何かに似ていませんか?

ザグレウスの神話の「輪廻転生」は日本人にとってはさほど違和感はないでしょう。
生前の行いによって、地獄に落ちたり極楽浄土へ行けたり、というのは仏教の考え方です。

では古代ギリシアの冥界観はどうでしょう?
私は神道の死後観に似ていると思いました。

黄泉の国についてはイザナギイザナミ神話などに登場するものの、「見るだけでも穢らわしい不吉な国」ぐらいの描写しかありません。
イザナミの遺体の様子は膿や虫がわき八色雷公(やくさのいかずち)がいると詳しいのに、どういう世界なのかは詳しく語られていません。

幕末の国学者である本居宣長(もとおりのりなが)

「死後、人間の魂は行いの善悪にかかわらず、すべて『黄泉国(よみのくに)』に行くとし、『黄泉国』のことについては細かい詮索は無用である*2

としていました。
「死んだら善人も悪人も皆ハデスの館に行く」と同じ考え方ですね。
ちなみに宣長は「儒教などの中国的な思想を取り除いて、ありのままをありのままに受け入れる大和心に立ち返るべき」という人なので、地獄や極楽といった仏教的思想も排したのです*3

では「生前の行いによって、死後に行く世界が極楽か地獄になるかが決まる」という考え方は神道に全くないのか?
というとそうでもありません。

平田篤胤(あつたね)幽冥(ゆうめい)

平田篤胤は師である宣長の「死ねば皆黄泉の国へ行く」という考え方を批判しました。

たとえ古学者であっても、いざ死に直面すると極楽往生を願い仏にすがろうとする。死後の魂がどこに鎮まるかを知るのは重要なことだ。「死後は善人も悪人も皆暗い黄泉の国に行く」というのは多くの人は受け入れられない。古い伝説や体験からしてもそんな説は誤りだと批判しました。*4

篤胤は、死後の魂はこの世にある「幽冥界」へ行くと主張しました。これは具体的にはお墓や神社を指します。

「幽冥界は生きてる者には見ることができないが、幽冥界からはこちらの世界を窺うことができ、我々は死ぬと幽冥界に行き、子孫や縁者を常に見守り援助しているとしたのです*5

これも「日本人が古くから持つ素朴な霊魂観」ですね。

篤胤は、善人の魂は幽世(かくりよ)夜見(よみ)の国という善世界・神の世界に行くとし、邪悪な者は「根国(ねのくに)底国(そこのくに)」としました。*6
幕末になってようやく「死んだら魂はどこに行くか」の話をしていますが、それ以前はどうだったのでしょうか?

平安から鎌倉時代まで、幽霊や妖怪などの観念はあるものの、神霊や人間の魂が住む他界についてはあまり文献が多くないそうです。
仏教の極楽、地獄、浄土や魔界の観念が広まった分、高天原、幽界や黄泉(よもつくに)の観念が薄らいだという経緯があります。

日本神話の黄泉国とギリシア神話の冥界の類似についてのお話でした。
日本神話とギリシア神話には多くの共通点がありますが、そはれはおいおい記事にしていきましょう。
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*1:
www.youtube.com 出典元。ラストのネタバレ有り!!

*2:神社のいろは続P143より

*3:また宣長は、禍福や吉兆なんて人がどうにもできないんだから、神様を祀って祖先を敬って、穏やかに楽しく暮らすしかないよねと割り切った人でもあります。

*4:神社のいろは要語集宗教編P58より

*5:神社のいろは続P143より

*6:神社のいろは要語集宗教編P223より

ハデス-家出してオリュンポスの神々になれ-

皆様お久しぶりです。tenです。
ずいぶんとご無沙汰していましたがその間は「ハデス」というギリシャ神話をモチーフとしたゲームをプレイしていました。

ハデス

HADES パッケージ版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)

www.youtube.com
画面は英語になってますが日本語版で遊べます。音声は英語のみ。

親子ゲンカして家出する話

主人公は冥界の王ハデスの息子ザグレウス。
反抗期のサグレウスはハデスの館から家出して地上を目指します。
途中で出会うオリュンポスの神々はザグレウスの親戚でもあります。彼らから功徳を受け、スキルを身につけ能力をパワーアップ。
叔父ゼウスなら攻撃に雷が付与され、従姉妹アテナの功徳は攻撃を跳ね返し、ディオニュソスは敵を二日酔いにし、ヘルメスは足が速くなり……といった神々の特性に合わせた功徳をもらえます。

脱出中に得た功徳、武器強化、HP増加などのパワーアップおよび金貨は、死亡するか脱出に成功するとすべて失います。
闇の結晶や宝珠、鍵などは持ち帰って恒久的な能力アップに使用し、ネクタルはキャラクタに渡して好感度を上げるのに使います。

ちなみに初回の脱出は7分で死にました。
しかし、死んでも失敗ではありません。死後はハデスの館に強制送還されますが、その度に少しずつ話が進んでいきます。
眠りの神ヒュプノスは死亡原因について話すので、敵の倒し方のヒントをくれたりします。
ハデスの館で武器を替えたり恒久的なパワーアップをしてから再チャレンジ。

何度か死亡するとゴッドモードが使用可能になります。
死ぬたびに神格が向上して防御率が2%ずつ上がるので、見た目ほど鬼ゲーではないです。

神々や英雄たちと会話することでストーリーが進み、何故ザグレウスは地上を目指すのか、ハデスとオリュンポスの神々との間に何があったのかが語られるようになります。

冥界の神々やオリュンポスの神々、英雄や、永遠の罰を受け続ける人々との会話がとても面白いんですよ。
他の神から功徳を受けていると「誰々とすでに会ったな」などとその神について教えてくれたり、持っている武器やストーリーの進行具合などの状況で会話が変わるので、本当に会話をしてるかのような気持ちになります。
今はメインストーリーはクリアした*1ので会話を聞いたり、それぞれのキャラクタのイベントを進めるために何周もしている状態です。

同じ事の繰り返しではありますが、敵の種類が増えたり攻撃パターンが変わったり、自分で細かくハンデをつけられたりするので50周しても全然飽きませんね。

キャラクタデザインも、古代ギリシャの死生観や神話を踏まえつつ「ジョジョの奇妙な冒険」に出てきそうなクセのあるビジュアルがたまりません。

欠点

説明が少ないので、ゲームシステムがよく分からないまま進めてました。攻略サイトなどを見ないとちょっとつらい。
参考動画を貼っておきます。

www.youtube.com

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なぜハデスを勧めるのか

単純に「神話や神々が題材だから」、というだけではありません。
古代ギリシャの死生観やギリシャ神話は日本神話と非常に共通点が多いからなのです。

さて、本日はここで時間切れです。

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*1:スタッフロールは見ました

更新休止のお知らせ

諸般の事情により。しばらく更新をお休みさせていただきます。
再開は3月の予定です。

これだけではさみしいので、今期の一押しアニメ「平家物語」を紹介。

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海の底の都の民*1としては見逃せないので視聴しました。

映像きれいなアニメってほぼ見る気がしないのですが、これは本当に美しいです。
アニメってこんなに美しく描けるんだって感心しました。
静かなストーリーながらひきつけるものがあります。

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