真光やめたら幸せになりました

真光抜けて十数年経ってようやく洗脳が解けました。

山、愛の試練 後編

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そこは原始的な空間でした。
木々に囲まれた道を下り、伝説の残る岩や、その手前に置かれた石仏を拝みます。
大きな岩を見てうしおさんが何かを感じ取ります。「ここは人の気配があるね。誰か住んでいたのかな。
神殿かな? 何か儀式をしたり拝んでいたのかもしれない」
毎回思いますが誰に確認を取ればいいんでしょうね。

とおりゃんせ

うしおさんが急に道を外れました。いえ、道自体はちゃんとあるのです。メインの通りから横道に入っていきました。
その道には木が倒れていました。それほど高い位置ではなく、乗り越えるのは難しくありませんが一瞬迷いがありました。うしおさんはその奥にある山肌にあいた四角い穴を見ています。
その少し手前に大きな岩があり、下に石仏がありました。つまりここは観光スポットということです。そして仏様があるということはきちんと祀られているということです。
「じゃあ、大丈夫だろう」と思いましたが目の前の倒木が気になります。
何かヤバイ感じがあります。うしおさんは悪い予感がしながらも自分では止められないようです。行こうか、行くまいか迷いました。
二人で岩の奥にある穴を見ました。

ああ、呼んでいる。
魅惑的で、でもなんだかぐるぐるとしています。

倒れた木をじっと眺めると、うしおさんが力強いねと言いました。
横たわる木の肌に生えた苔を見て、「倒れてからどのくらいの間、このままになっているのだろう」と考えました。ここは観光地なのにどうしてとおせんぼのままなんだろう? まるで立入禁止と言っているようではありませんか。
倒木がなければ、二人ともあの穴の前に行っていたでしょう。

うしおさんが、「穴がぼんやりしてよく見えないから」と近くに行きたがります。
「葉っぱがたくさん落ちてきて見えない」
今は春ですから落ち葉なんか降ってきません。また何か見えないはずのものを見ているのです。
うしおさんの様子がおかしいことに気づきました。
今度は「穴の前に注連縄が張ってある」とうしおさんは言い張りました。
注連縄は神道のシンボルですから、それがあればうしおさんが来ると思ったのでしょうね。
「そんなものないよ。注連縄があるなら紙垂(しで)が見えるはずだよ」
私もよく見ようとしました。さっきまではっきり見えていたはずなのに、穴のあたりだけ視界がぼやけて見えないものだからよけいに気になりはじめました。ぼんやりするのは以前の山の神事件を彷彿とさせます。

そしてうしおさんが決定的な一言を口にしました。
「ここで待ってて、見てくるから」
うしおさんが私を置いていこうとしている。疑いが確信に変わりました。頭の中で非常事態を告げる赤いランプが回転しサイレンが鳴ります。
「待って、ここは境目だよ!」
とうしおさんの腕を引き留めました。
「じゃあ越えないから」
と穴を眺めながら道も何もない山肌に足を踏み入れました。ケガをするぞ思って呼び戻しました。
「この人はもう完全にアカン」と思いましたが、そこから離れたら通常営業に戻りました。

名残惜しそうにうしおさんはその穴の写真を撮りました。後で見返してみたら別段ただの穴で何も危険な感じはしませんでした。うしおさんは「あのとき見たのと違うものが写っている」と言っていました。

後でパンフレットを確認したらきちんと観光地として載っている場所でした。なのに私たち二人しかいなくて、他の人は後ろを通り過ぎていくだけでした。誰も私たちのいるところに来ないし、まるで別の空間にいるかのようでした。

境目のお地蔵さん

道を歩いて行くとさっきのお寺の近くまできており、子供の背丈くらいのお地蔵さんが立っていました。まるで生きている人間がそこにいるかのような存在感があります。なんだか私に用事があるような雰囲気で、じいっと見られている感じがしました。セリフをつけるなら「今の、な! な!」というところでしょうか。
うしおさんが言うには「このお地蔵さんが境目になっている」とのことでした。助けてくださったに違いないと二人で手を合わせました。

バス停までの帰り道で陽気な外国人が片手を上げて「あと5分でバスが出るよ」と教えてくれましたが、どう考えても5分で戻れない距離でした。
体力のない私がこんなに大変な道のりを歩いてもほとんど疲れはなく、むしろ肩こりや腰痛が治っていました。

麓まで戻るとカミ感は薄れて人間界に帰ってきた感じがしました。野犬が集まり始め、ゴミ箱に顔を突っ込んで漁りだしました。
別の神社に行く予定でしたが閉門時間をとっくに過ぎていて参拝ができず、残念でした。
穴の件は交通事故みたいなもので、山自体は大変すばらしかったです。
うしおさんは特に山を下りることを残念がっていました。

眠れない

その夜は疲れてすぐ寝るだろうと思いきや、解決できない情報で頭がパンクしました。答えが絶対に出ないのですが、気になると他のことが手に着きません。
「あのとき穴の中の何かと目があった」とうしおさん。
何それ普通に怖い。
「何が見えたの?」
「お地蔵さん」
「それは穴の手前にあった岩の下だよ。穴の前には何もないよ」

うしおさんが山に呼ばれるのは「一生に一度のまれなできごと」ではなく「定期的に起こること」と思わないと駄目なんだなと思いました。
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この世のものではないので解決しません。
倒木のおかけで向こう側には行きませんでしたが、うしおさんがもっと怖いことを言い出しました。
「むしろ山肌の斜面に誘い出す方が目的だったかもしれない。呼ばれると言っても五体満足で生きている必要はないし、魂だけ吸えばいいでしょ?」
向こう側に行っていたら、根の堅州国(かたすくに)にでも行っていたのでしょうか。

考えても分かりません。
あれが何なのかさっぱり分かりません。神様のことは分からないのです。私は知るべき立場にはないし、知ってはならないのです。
でも何のためなのか、大きな流れは分かります。二人の絆をより強くするためです。
縁結びの神様にお礼参りをしたところからこれは始まったのです。あのとき手をつないでいたから。

うしおさんは生涯のパートナー。
持論ですが「この人だ」と決める基準は「一緒に地獄に堕ちても後悔しない」だと思っています。
しかしこのときばかりは考え込んでしまいました。「うしおさんがあの穴に入ってしまったら、自分は迷いなく後を追うことができるだろうか?」と。
ついていく勇気はありません。自分の気持ちに嘘があることが悲しくなってしまいました。
そのことをうしおさんに話すと「それはちょっと悩むところが違う。論点がズレていると思う」と言いました。
「tenさんが『あんなところには行きたくない』と思うから守れるんだよ。『この世にいたい』って思ってるから自分もとどまれる。だからそれでいいんだよ。それに一緒にあの穴に入ったからといって一緒にいられるとは限らないよ」
と諭されました。
雨が急に降ったから、きっと悪い考えが出てきたのでしょう。すぐに止んで過ぎ去っていきました。

しばらくはこのことでうんうんと悩んで過ごしました。

翌日とりあえず氏神様に参拝するつもりでしたが、うしおさんの提案で別の神社に行くことにしました。何度か行ったことがありましたが看板でご祭神を確認してびっくり。昨日参拝し損ねた神社と同じ神様なのです。氏神様とここのご祭神もご縁があり、不思議なもんだな思いました。

人間にはどうしようもない領域のことでしたので、神様に報告したら後はお任せです。参拝が終わったらすっきりしました。

翌日はうしおさんと帰省した友達が遊びに行く予定でした。
自分がいなくてもこの人は山にさらわれたりしないだろうかと心配になって泣きつきました。久しぶりの旧友との交流なので快く送り出したいのは山々ですが、うしおさんが消えてしまう恐怖が激しくて取り乱しました。

行き先がある程度決まっていたので山に登る必要があるかは地図で確認して、山に行かないようにしつこく言いました。神棚に祈り、特に交通安全の神様には道中の無事をお願いしました。

うしおさんの発案で、私のご朱印帳もうしおさんが持ち歩くことにしました。どういうルールなのかは分かりません。
当日は、友人たちとは一部別れて行動したので友人が山に行く間は別のところにいたようです。小さな祠があり、そんなところにも例の交通安全の神様が祭られていました。
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